そうして私は月に呑まれる
意識だけ飛ばして
ここより近くで眺めることができたら
それは美しいのかな

反語、とは言い切れないけど
触れられるところまで行ったらきっと
遠くに見える星が
何よりも恋しくなるんだ
その思い出に意識を飛ばすんだ

私はこの意識を手放したくない
体にしがみ付いてでも
遠くのひかりに焦がれたとしても

私は全身でぶつかるしか出来ない
隕石のように

だから
抱くのは願望だけでいい
落ちる前に燃え尽きてしまうのもいい
落ちたところで地面に跡など残らない
そこに海などあるか知れない
ぶつかって砕けてしまうならそれでいい
その海に溺れたいなんて思わない
そのまま凍りつきたいなんて死んでも言わない

綺麗なものを知りすぎたんだ
触れられないものはそのままでいい
私は焦がれるだけでいい
意識だけ満たされたって足らない
全部が砕けるくらいの勢いでぶつかるしかない
残るものがあるなら
そのままの海だけでいい

今にも意識は飛びそうなんだ
沈んだことにも気付けない
そうして私は月に呑まれる